この世界にきみさえいれば、それでよかった。



たしかにヒロは言うのが遅すぎた。


打ち明けるのに時間が必要だったように、打ち明けられたほうにも果てしない時間は必要で。

なのに、ヒロの心臓は受け入れる時間さえ与えてくれないほど時間に限りがある。

奏介くんが怒るのは当然だし、もう友達じゃないと呆れてしまうのも分かる。でも……。



「ヒロにとってのタイミングは今だったんです」


10年と言われた時間が1年、また1年と過ぎていく中で、焦りも不安も生かされた自分への課題もヒロはたくさんあったと思う。


そんな迷いの日々で奏介くんと出逢って。その屈託のない笑顔とか人懐っこさとか。きっと奏介くんの明るさで病気だということを忘れられた瞬間が何度もあったはず。


だから本当は、打ち明ける日が来なければいいと思っていた。

そんな日が訪れることなく、奏介くんとバカなことをして過ごせればと思ってた。


でも、ヒロは自分で察してしまったのだ。


ああ、もうすぐだなって。やっぱり10年という壁は越えられないなって。


そうやって身体の変化に気づいて、終わりを覚悟したからこそ、ヒロのタイミングは今だったんだと思う。

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