この世界にきみさえいれば、それでよかった。
それから奏介くんと別れて私はヒロの家に戻った。部屋の中に入るとソファーに座っていたはずのヒロがいない。
なんとなく胸騒ぎがして近づくと……。ソファーの下でヒロが胸を押さえてうずくまっていた。
「……ヒロッ!!」
私はすぐに駆け寄った。ヒロはとても苦しそうにしていて呼吸の仕方がおかしい。
「だ、大丈夫?すぐに救急車呼ぶから!」
慌ててスマホを取り出すと、ヒロが止めるように私の腕を掴む。
「ハア……平気、だから……っ」
全然平気な顔をしていないヒロは、浅い呼吸のせいで顔が青くなっていた。
「……ただの発作。よくあることだから大丈夫」
「で、でも……」
こんなに苦しそうなのに、これがヒロにとってはよくあることなの?
私の前だとこんな姿は見せなかったのに、今までヒロはどれだけの発作をひとりで耐えていたんだろう。
考えるだけで胸が締まる。
「じゃあ、薬……!薬飲めばラクになる?」
早くなんとかしてあげたくて私は必死だった。
「……ハア……飲んでも、もうあんま意味ない」
「そんな……」
どうしていいか分からずにただ私はツラそうなヒロを見ているだけ。すると、力が抜けたようにヒロが私の胸に寄りかかってきた。
「ちょっと……このままでいさせて。あと5分もすれば落ち着くから……」
ゆっくりと呼吸を整えはじめたヒロを私は包むように抱きしめた。
背中に手を回して、ヒロの呼吸に合わせてトントンと私もリズムを合わせる。