この世界にきみさえいれば、それでよかった。
そして私たちは自然とベッドへと移動した。
「いいの?」と、何度もヒロが聞いてきて私は小さく首を縦に振る。
ヒロが私のブラウスのボタンをひとつずつ外していって、鼓動がうるさいのは恥ずかしいことよりも、身体の傷痕を見せる怖さ。
でも、ヒロになら見せられる。
ヒロだから見てほしいと思えた。
「……けっこうひどいでしょ?」
ずっと隠し続けていた内出血を繰り返した痕。
露(あらわ)になった腕やお腹や背中。自分でもなかなか直視できない傷痕をヒロはただじっと見つめていた。
「ごめんね。本当は綺麗な身体をヒロに見せたかったけど……」
「綺麗だよ」
「え?」
「サユはすげえ綺麗だよ」
じわりと瞳に涙が溜まっていく。ヒロが傷痕にキスをするたびにどんどん過去に落としてきた心の欠片が集まってくる。
「ってか俺もサユに見せてないものあるんだ」
そう言ってヒロがTシャツを脱いだ。上半身裸になったヒロの左胸には大きな縦方向に伸びる手術の痕。
「俺もこの傷は誰にも見せたことない」
ヒロが私と同じように不安な顔をした。