この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「触ってもいい?」
「うん」
ゆっくりと私は手を伸ばしてヒロの傷痕に触れる。
手を添えるとドクンドクンと心臓の音が伝わってきて、こんなに愛しい気持ちになったのは初めてだ。
「ヒロこそ、いいの?また苦しくならない?」
「今はなってもいいよ」
ヒロがまた私に優しいキスをする。
「私たち傷だらけだね」
言いながら声が涙で詰まった。
「うん。でも痛くない」
「うん。もう痛くないね」
そして天窓から見える空が星でいっぱいになる頃、私たちはひとつになった。
お互いの傷痕に触れて、お互いに何度も名前を呼んで。これが最初で最後だということはヒロも私も分かっていた。
でも、暖かさも愛しさも今はなにもかもが同じで。
こんなに幸せな瞬間がこの世界にはあるんだって思ったら、また泣けてきて。
ヒロは目を細目ながら「好きだよ」と、涙にもキスをしてくれた。