この世界にきみさえいれば、それでよかった。
次の日。私はヒロの腕の中で目を覚ました。目を開けるとすでにヒロは起きていて、どうやら寝顔を見られていたみたい。
「お、お……おはよう」
噛みそうになった私を見てヒロが笑う。
「うん。おはよう」
ヒロは大きなあくびをしながら身体を起こして大きく手を伸ばした。
ヒロと迎える朝は久しぶりのこと。なんだか昨日のことが夢のようだけど、ヒロからもらった愛しさが身体に残っていて胸が熱くなる。
「学校面倒くせーな。今日サボるか」
ヒロは冷蔵庫を開けてミネラルウォーターを飲んだ。
「そんなことしたら美幸さんに怒られるよ」
「バレなきゃいいだろ」
「でも私今日数学の小テストがある」
「じゃあ、行かなきゃダメだな」
不良なのに、実は真面目なヒロのこういうところも好き。
「家に連絡した?心配してんじゃねーの?」
「うん。今してるところ」
昨日は無断外泊をしてしまったから今さらおばあちゃんにメールを打っていた。
今日帰ったら怒られると思うけど、昨日のことに後悔はないし、思い出すだけで胸がいっぱいになる。