この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「奏介くんがいると病院だって忘れるぐらい騒がしいよね」
私はそう言って学生カバンを荷物入れの棚へと置いた。
「ここで騒がしくしたらダメだろ」とヒロは言い返しながらも顔色がいつもより良いのは奏介くんに元気をもらったからだと思う。
「サユ、こっちきて」
ヒロがふいに私を手招きした。
ふたりきりになると、ヒロはこうして私をベッドへと呼ぶ。そして私を後ろから抱きしめるのが、最近のヒロの甘え方。
「なんかずっとベッドの上にいると動かなすぎて身長縮みそう」
はあ、と深いため息をついてるヒロがなんだか可愛い。
「ヒロの身長なら多少縮んでも大丈夫だよ」
前はヒロのことを追いかけるばかりだったけど、今はちゃんと肩を並べられてる気がする。
それを証拠にヒロはけっこうムリや要望やワガママも私に言うようになっていた。
「なあ、お前今日の夜出てこれる?」
「え、夜って……」
ヒロがいたずらっ子みたいな顔をしていて、これは私がなにを言っても聞かない顔だ。