この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「そんな固くならなくても、取って食ったりしねーから安心しろ」
ヒロがぽんぽんと私は頭を撫でる。
ヒロは私の事情なんてなにも探らない。
どうして家に帰りたくないのとか、ご飯を食べただけで泣いたことも本当はきっと美味しかっただけじゃないって分かってるはずなのに……。
「ヒロは、なにも聞かないんだね」
聞かれても答えられないことだらけだけど。
「お前が話したくなったら話せばいいことだろ」
ああ、本当にヒロはズルいな。
そうやって弱い私をすぐに受け止めてくれる。
あれだけ疼いていた傷痕が今はとても静かで。
癒えることなんてきっとないだろうけど、やっぱりいつかすべてを打ち明けたいと思うのはヒロみたいな人がいい。
ううん、私はヒロがいい。