この世界にきみさえいれば、それでよかった。


ヒロがいなくなった部屋はとても広く感じた。

とりあえずベッドの布団を綺麗に整えて、部屋の掃除でもしようかと考えたけれど、私が掃除なんてしなくてもホコリひとつない。


ヒロはいたいだけいればいいと言ってくれたけど、ヒロのバイトが終わるのを待つだけじゃただのお荷物だ。

昨日は勢いのまま家を飛び出してきたから、お財布も持ってきてないし、着るものだってない。これから必要になる最低限のものだけは、取りに戻ったほうがいいかもしれない。


私がヒロの家を出たのは10時過ぎ。ちょうどおばあちゃんが買い物などで出かけてる確率が高い時間帯を選んだ。

出掛けるならと、ヒロが駅までの道のりをざっくりと紙に書いてくれたおかげで、私は馴染みある場所へとたどり着くことができた。


そこからはいつも通っている道を歩き、家が見えてきた頃に私は深呼吸する。

大丈夫。あのふたりが来るのは明日だ。今日を逃せば10日間はここへは近づけない。


あまり音を立てないようにそっと玄関を開けた。玄関に鍵はかけられていなかったけど、中におばあちゃんの気配はない。もしかしたら、近所の人の家にでも行ってるのかも。

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