この世界にきみさえいれば、それでよかった。
……私って、本当に役立たずかもと、落ち込んでいるところでピンポーンと家のインターホンが鳴った。
勝手に出ていいのか迷ったけど、一応モニターを確認するて、そこには「開けてー」と手を振る人物。
……そ、奏介くん?
慌てて鍵を開けると、やっぱりそこには奏介くんが立っていた。
「ただいま、サユちゃん」
「え、あ、おかえりなさい?」
思わず返事をしてしまったけど、イマイチ状況が理解できていない。もしかして奏介くんと会う約束でもしてたのかな?
それとも、奏介くんも一緒に住んでるとか?
いや、でもヒロはひとり暮らしだって……。
「さっさと進め、バカ」
私が色々と考えてる中、玄関にいた奏介くんの背後から足蹴りが飛んできた。
「ちょっと、俺とサユちゃんの新婚ごっこを邪魔しないで!」
「発想がいちいちキモいんだよ、お前は」
奏介くんを押し退けるようにして帰ってきたヒロの手には一枚のマットレス。それをドサッとソファーの上に乗せて、襟元をパタパタとさせる。
「なんでエアコンついてないの?」
ヒロと一緒に家に上がってきた奏介くんも「涼しくない!」と文句を言っていた。