この世界にきみさえいれば、それでよかった。
「でもお前は少し太ったほうがいいよ。華奢すぎて折れそう」
「お、折れないよ、べつに」
「食いもん屋ならいっぱい知ってるから今度また色々連れてってやるよ」
ヒロは私を太らせるつもりらしい。
自分の体型なんてあんまり気にしたことはなかったけど、男の子は肉付きがいいほうがいいと聞いたことがあるし、ヒロもそうなのだろうか。
ヒロはどんなタイプが好きですか?
どんな女の子を好きになったことがありますか?
聞けもしない質問を頭で繰り返してる私は、やっぱり少し変かもしれない。
ヒロが野良猫のように私を拾ってくれたからと言って、このまま懐いてしまおうなんて思ってないし、ヒロの家に居座るつもりもない。
でも、ヒロがなにも聞かずに私を受け入れてくれるから、勘違いしそうになるよ。
私はそんな風に気に留めてもらったり、今度また色々連れてってやるなんて、約束してくれる人なんていなかったから。
「……ねえ、ヒロはなんで私に優しくしてくれるの?」
ヒロの隣にいると、平常心ではいられない時もある。
心は固く閉ざしていたはずなのにヒロといると……。もっとこのまま一緒にって、そんな贅沢なことさえ考えてしまう。