その先へ
一気に目が覚めたオレはエントランスへと急ぐ。エレベーターのボタンを何度も押し乗り込むと、5階まで上がるほんの数秒でさえもどかしく感じた。扉をこじ開け自室の前まで走る。

鍵を差し込む手が震え、ゆっくりとドアを開けると、見慣れた靴が一足揃えて置かれていた。

心臓がバクバクしている。開けっ放しのリビングのドアの向こうには誰もいない。閉まっている寝室のドアノブに手をやり一気にひくと、中には、円香がいた。

涙で頬を濡らしたまま、びっくりしたのだろう、まん丸の目をしてオレをみている。数日ぶりの円香。

その周りには荷物をまとめていたのか、衣装ケースや、段ボールに円香の私物が整理されている。

「...奏斗、どうして、仕事は...」

久々に聞いた円香の声は困惑で震えていて、それを聞いた瞬間、オレの体は勝手に動き出した。

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