その先へ
そう、思い出。懐かしい思い出。


7年目を迎えた私達は、またすれ違いの生活をしていた。


主任に昇進した奏斗は、仕事が忙しくなった。


一緒に食べていた夕飯は私一人になることが多くなった。
奏斗の分を作っていても帰宅が遅すぎて食べてもらえず、私のお弁当になったりして。必然的に片付けも私がやることになる。


『今だけだから。すぐに落ち着くよ。それまでごめんな』


申し訳なさそうな顔をされれば、『大丈夫、頑張って!』て言うしかないじゃないか。


それともう一つ、私の中で密かに期待してることがあったから、我慢できていたのだと思う。


昇進して落ち着いたら、『結婚しよう』と言ってくれるんじゃないかって。


男はまだまだなのかもしれないけど、ちらほら奏斗の周りでも結婚する友人がでてきている。


結婚式の招待状や、結婚報告が届くたびに、私は何か言ってくれるかな?と期待するのだけれど、奏斗は無関心に『へぇーっ』と言うだけ。
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