極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「どうしたの?」


「どうしたのじゃないわよ、柚希!」


突如、有香がすごい剣幕で起き上がって叫んだので、私も飛び上がった。


「あの人、王子よ!」


「うん。確かに王子っぽい人だったね。なかなかのイケメンさん」


アンチイケメンを自称しながら見とれてしまった決まりの悪さで、若干控えめな評価で余裕を見せようとした私は、有香の次の言葉を聞いて、真顔になった。


「そうじゃなくて! さっきの人が王子本人なの!」


「……本人?」


本人って、まさか……。


「高梨室長よ! もう、どうしてくれるのよ!」


有香は泣かんばかりの勢いだ。


「う、嘘でしょ? なんでそんなセレブがこんな……」


〝場末の店にいるのよ〟と言いかけ、店に失礼だと気づいて寸でのところで飲み込んだ。


「嘘じゃないっ」


またカウンターに突っ伏した有香の隣で、私は必死にこれまでの会話を振り返った。


〝実力かどうかはわからない〟
〝女遊びが激しくて金遣いが荒いろくでなし〟


思い出すほどに血の気が引いていく。
その他にも言ったかもしれないけれど、逃避本能なのか、私の脳がそれ以上思い出すことを拒否した。



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