極甘同居～クールな御曹司に独占されました～

「まだ食事が済んでいなかったのか。相変わらず遅いな」


慌ててさも食事の準備をしていたかのように冷蔵庫を開け、顔を突っ込んだ。
このまま冷蔵庫に入ってしまいたいぐらい頬が熱い。


「生産技術は慢性的に人手が足りないな。こんな状態でいいはずがないのに。申し訳ない」


でも彼がかけてきた言葉は至極真面目な、そして私が普段から悔しく思っていたことだった。
冷蔵庫から顔を出し、まじまじと彼を見つめる。


新技術の開発情報ばかりがもてはやされているけれど、実際には新技術だけではあまり意味を持っていない。
最も難しいのはそれを百パーセントに近い歩留まりで量産する「生産技術」で、量産できなければ新型ディスプレイは市場に出ることなく終わってしまう。


でも、技術を理解しない上層部は注目を浴びることにこだわる。
会社の上層部は生産技術の過酷な勤務状態なんて重く見ていないか、もしかすると認識すらしていないのかもしれない。
表沙汰にはならないけれど、過労で精神をやられてしまう社員が結構いる。