極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「トップシェアを維持しているのは納期も性能もモバイルメーカーの無茶な要求に応えている生産技術の功績なんだけどな」


高梨さんは父親である社長の方針にあまり賛成ではないらしい。
言葉や表情からそれが窺えた。

彼が技術に精通しているという中島さんから聞いた話を思い出し、なんだか急に彼が味方に思えてきて、私は自然と笑顔になった。


「はい。私、誇りを持ってます。地味な仕事ですけど、私たちが情報技術産業の進化を支えてるんだって」


もちろん会社を動かしているのは生産技術だけではない。
経営には末端の私などには想像もつかない厳しさがあり、多面的な視野が要るのだろう。


将来経営のトップに立つ人を相手に青臭く胸を張ったことが急に恥ずかしくなった。
再び背中を向け、冷蔵庫から作り置きのお惣菜をせっせと取り出した。



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