極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「家ではこういうものはあまり食べたことがなかったな」


私が口をつぐんで食事を再開すると、高梨さんは珍しく自分のことを話し始めた。


「父親は付き合いで外食ばかりだし、母親も料理が好きじゃない」


話の内容からすると温もりに欠けた家庭に思えるけれど、高梨さんは特に悲壮感は漂わせていない。
何に対しても淡々と受け止めている感じだ。


「銀座ランチの帰りにデパ地下で買ってきたものが多かったな」


「ああ……憧れるけど高くて買えないヤツです」


「まあ、それなりに美味かった。苦手な料理に努力するより、金で解決できるならそれでいいっていうタイプ。ある意味合理的といえば合理的だ」


高梨さんのお母様は、踏み込んできた時に顔を見ただけだけれど、三十歳の息子がいるとは思えない容貌だった。
美容に相当なお金と時間をかけていそうな、まるで女優さんのように優雅な印象だ。

なるほど、と内心頷きつつ、高梨さんの整った顔はお母様の遺伝子なのねと、そこにも納得した。




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