極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「そういえば、どうしてそんなに金欠なんだ?」


〝高くて買えない〟という発言が墓穴を掘ったようで、彼はシビアに話の矛先を変えた。


「入社五年目……いや、もう六年目に入ったか。そこそこ給与はあるだろう」


〝安月給〟発言を思い出して身を縮める。
でも、私だって無駄遣いしているわけではない。


「残業は全額つけられてるか?」


「……はい」


返事に少し間が開いてしまった。

実は生産技術部門は残業時間が膨大なので、一定時間以上は暗黙でサービス残業にする雰囲気がある。
でもそのことを高梨さんに気づかれるとまずいだろう。

私の返事に不自然さを感じたのか、高梨さんの視線が少し鋭くなった。
焦って別の理由を説明した。


「学生時代に奨学金をいくつか貰っていて、貸与型が二件あるんです。その返済とか、いろいろです」


奨学金とはいえ、借金には変わりない。
給付型の奨学金は少額の一件しか取れなかった。

あと少し成績が良ければもっといい条件の奨学金が受けられたのに、そのことは学費の安い国立大学を落ちたことと並んで私の痛恨の歴史だ。


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