極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
大根は油揚げと薄味の煮物にしよう。
ふろふき大根にしてもいいかもしれない。


店内で引っ込めていた鼻歌をまた歌いそうになる。
誰かのために献立を考えるのは楽しいものだなと、心の中でまた上機嫌の言い訳をした。


梅雨入り前の五月の末は夏日のように気温が高く、マンションのエレベーターに到着する頃には額に汗をかいていた。
買い物袋は腕に食い込んでいるし、袋が少し裂けてきていた。


あと一息!

十階に到着すると、買い物袋から長く飛び出した大根葉を揺らしながら部屋に急いだ。袋が破れたら大変だ。
しかし、そこで事件は起きたのだった。


バッグの中の鍵を探っていた私は廊下の前方を見ていなかった。
ようやく鍵を探り当て、顔を上げたところで、私はビクッと立ち止まった。


高梨さんの部屋の前に、綺麗な女性が立っているのだ。


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