極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「改めまして、森下柚希と申します」


私が挨拶をしたのに、彼女はそれを無視するように宣言した。


「単刀直入に申し上げますけど、あなたが彼と結婚するのは無理よ」


「それはいずれ彼が決めることだと思います」


間髪入れずに返したけれど、なぜか傷ついている自分がいる。
私は偽物であって、彼との結婚を夢見ている立場ではないのに。


「ご自分が彼にふさわしいとでも思っていらっしゃるの? 失礼ながら調べさせて頂きましたけれど、ご実家は農家だそうで」


勝手に調べられた不快感と遠回しに実家を侮辱された怒りが込み上げた。
でも、この場は穏便に収めるべきだろう。


「そうなんです。彼、野菜が大好きなんですよ」


満面の笑顔でわざとピントのぼけた返事をすると、相手は呆れ返った表情を浮かべた。


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