極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「それなのに、こんな普通の人でがっかり」


彼女は黙り込む私を睨み付けている。
複雑な思いを脇に押しやり、私は口を開いた。


「確かに、私の家柄は彼にふさわしくないのかもしれません。潤沢な資金も用意してあげられません」


もし私が彼の本物の恋人だったら、何をしてあげられるだろう?
その想像は思いのほか容易くて、それでいて胸のどこかが痛かった。


「でも、私は液晶技術を担う一社員として、うちの社の精神を理解しています。彼が目指す夢、守ろうとしている理念を理解し支えています。それだけは胸を張れます。お金を超える力だと信じてます」


彼女に向けてというより、自分に向けた言葉だったかもしれない。
一社員としての想いなのか、それとも偽装恋愛という仮想の中の言葉なのか区別がつかないまま、一言一言に心を込めた。


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