極甘同居～クールな御曹司に独占されました～

帰るだけなのに、なぜ化粧する？
言外にそう示している彼の発言はその通りだけど、本当は高梨さんのためだったのに……。

嘘をついているのだから仕方がないにしても、〝変わってない〟はショックだ。


「現に、蕎麦屋で見た顔と駐輪場で見た顔は俺の中で即一致したしな」


「べ、べつに高梨さんにどう思われようとかまいません」


「まあそうだろうけどな」


女心をへし折られたせいで、口が思いとは逆のことを言ってしまう。


「その男が本当にお前を好きなら、化粧しろだなんて注文つけないだろう」


「大して変わってないんだから無駄だってことですか」


「無駄とは言っていない。下らない男かどうかを見極めてから口車に乗れと言ってるんだ」


〝職場に好きな人がいる〟設定なんてやめておけばよかったのかもしれない。
でも、今の私はそれにしがみつくしかなかった。