極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
それだけならまだいい。

私が毎日防塵服を着て立ち入るのは液晶パネルが実際に製造されている区域で、ほんの少しでもチリやホコリを持ち込むと重大な製品不良の原因になってしまう。当然ながらメークは一切禁止だ。

かといって、クリーンルームに出入りする度に顔を洗ったりメークしたりするわけにもいかない。


私の職場は男性ばかりで、同じ悩みを語れる女性の同僚はいない。
眉がとても薄い私は、最初は職場の男性陣に〝まろ〟と呼ばれてからかわれるなど、恥ずかしくて仕方なかったけれど、最近は一向に平気になってしまった。
今では周囲も慣れて、ふざけた名前で私を呼ぶ人はいない。


二十七歳、彼氏なし。
毎日スッピンで作業服。

これって女としてどうなのだろう?


幸か不幸か、職場に若い独身男性は少なく、恋の可能性はない。
スッピンでも気にする必要がないと言えばそうかもしれないけれど、こんな職場に幽閉されていたのでは、ただでさえ低かった女子力が上がるはずもない。


さらには、ほぼ毎日深夜まで残業しているせいで、友人は誰も私に合コンの誘いをかけてくれなくなった。


私、結婚できないかも。
……いや。〝かも〟じゃなくて、このままでは絶対にできない。


三十歳の大台が見えてきた年齢の女にとって、これは切実な問題だ。



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