極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「飲むか?」


そのままリビングから回れ右をしてバスルームに行こうとすると、彼が声をかけてきた。


「まだ冷えてる」


彼がテーブルの上にあった一本を手渡してきた。
ビールは冷蔵庫から出したばかりのようで、まだほとんど結露もせず、私の手のひらに氷のような温度を伝えてくる。

この間は「夜中にビール持って男の隣に来るな」って言ったくせに、やっぱり高梨さん自身は私を女だと思ってないんじゃない。
そう思うと、少し投げやりな気分になった。


「ありがとうございます。でも、いいです」


意地を張り、私はそう答えて彼に渡されたビールをテーブルに戻した。


本当は傍にいたいのに。
本当はもっとずっと彼を見ていたいのに。
本当は彼の前で笑っていたいのに。


好きだと自覚した気持ちが顔に出てしまわないよう気を張ると、愛想のない慇懃な口調になってしまった。


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