極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「憧れるわよね……。政略結婚って響き」


有香の声を聞きながらお品書きを眺める。

さきほど済ませたオーダーでは、どうしても飲みたかったハイボールのために、一番安価なきつね蕎麦にした。

でも右隣の客が食べ始めた海老天蕎麦を見ていると、我慢できなくなってきたのだ。
顔は見えないけれど隣は若い男性客のようで、シャツの手首からは高級そうな腕時計が覗いている。
こんな大衆的な蕎麦屋ではあまり見かけないタイプだ。


「秘書室の子が言ってたけど、すごい紳士で、正真正銘の王子なんだって」


うちの社の〝王子〟より、私は隣の海老天の方が気になって仕方がない。

でもあまり物欲しげに見る訳にもいかず、お品書きを凝視して我慢しているうちに、視界の端のそれはサクサクと軽快な音を立てて、見る間に尻尾だけになってしまった。


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