極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
涙と告白と初めての夜
元々、緊急の避難から始まった同棲だから、私が持参した荷物はさほど多くない。
だから同棲解消に向けての準備はほとんどすることがなかった。

決意したくせに、もう彼に会えなくなるのだと思うと無意識に先延ばしにしていた私も、無為に時間稼ぎをする自分の中途半端さに嫌気が差し、ついに観念した。


「高梨さん」


金曜日の夜、食事を終えてリビングで仕事をしている彼の前に座った。


「お仕事中にごめんなさい。お話があるんですが、手短に終えます」


「……どうした?」


私の様子にいつもと違う緊張感を感じ取ったのか、高梨さんはキーを打つ手を止め、それからパソコンを閉じた。

自分の恋に終止符を打つ苦しい申し出はできるだけすみやかに終わらせて、後で一人になってから泣きたかったのに、真剣に聞くよと言われているようで、早くも涙腺が緩みそうになる。


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