極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
「……好きな男とうまくいったのか?」


彼の声は優しかった。
それが余計に私を切なく苦しくする。


ここで嘘をついてしまえばいい。
そう思うのに。唇を開き、何も声を出せずにまた閉じる。

高梨さんがくれたリップを塗った唇は、彼以外の人を好きだという嘘をついくれなかった。


「……いいえ」


視界が涙で滲んでいく。


「俺が原因でこじれたのか? だったら俺が誤解を──」


「違います」


俺が誤解を解くなんて言わないで。
そんなことを言われたら泣いてしまうから。


「ただ、帰りたいだけです。同棲を始めてもうかなり経つから……」


彼の顔をしっかり見つめて言いたいのに、ゆらゆらと膨らむ雫でもうほとんど見えなかった。



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