極甘同居～クールな御曹司に独占されました～
「帰って来るのは夏前らしいぞ」


「それ、確かなのか？」


「海外人事筋から聞いたから間違いない」


長谷川麻里子さんが今年帰国予定だという有香の話は本当だったのだ。
それも夏前だなんて、もう目前だ。

過去の存在だと割り切ろうとしても、あまりに完璧な過去の恋人の気配は脅威だった。
しかも、二人は気持ちを残したまま別れたというのだから。

まるで青空の向こうに台風が迫っているような、そんな気分になった。


「一度でいいから拝んでみたい」


「諦めろ。こんな事業所には来ねえだろ」


「だって次期社長夫人だろ？　帰国後の配属先はそれなりのＶＩＰ待遇じゃないの？」


本社から隔絶された事業部にまで、同じ〝噂〟が流れているなんて……。
何が真実で何が噂なのか、私には何もわからない。

平静でいようと思うのに、私はたった八文字のログインパスワードを何度も打ち間違えていた。


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