極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
やっぱり諦めよう……。

溜息をついて、お品書きを元通りに割り箸立てと壁の隙間に差し込んだ。


お品書きと言っても、お洒落なレストランでは有り得ない、ラミネート加工のペラペラしたやつだ。
政略結婚するようなセレブは、こんなものは見たこともないだろう。


「いいの? 海老天でしょ?」


有香が気づいて王子の話を中断した。


「うん、いいの。また今度にする」


「単品でも二百円じゃない」


「その二百円の油断が響くのよ」


自分に言い聞かせるように、いかめしい調子で有香に説明した。
お給料日は来週月曜日。それまで三千円で持ちこたえなければいけないのだから。


「一人暮らしに憧れるけど、柚希を見てると二の足踏むわ」


「安月給だから仕方ないよね。早く主任に昇格したいな。お給料増えるし」


融けた氷で少しかさの増えた薄いハイボールを一口飲んで、目の前を運ばれていく他の誰かのかき揚げ蕎麦を見送った。




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