極甘同居～クールな御曹司に独占されました～

向かうのは、この数か月、中島さんに送迎してもらっている間は足を踏み入れることもなかった駐輪場だ。
なるべく周囲を見ないようにうつむき加減に自転車を引き出し、押して歩いた。

有香との待ち合わせまで余裕があるから、一度アパートに帰って着替えてから出よう。


駐輪場を抜け広い通路に出ると、私は顔を上げてペダルを漕ぎ始めた。
昼間の熱を残した夏の夕風が髪をなびかせ、頬を撫でていく。

私の日常はこの数か月間が嘘のように、すべてが悲しいほど元通りになっていた。


でも、一つだけ元通りにならないのは、私の心だった。
起きている時も寝ている時も、心はずっと彼に恋焦がれていた。

特に駐輪場を見ると、彼と出会った時のことを思い出してしまって辛かった。