極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
彼の腕に揺られながら、通勤路の銀杏並木を見上げた。
私たちに緑の枝をさしかけ、初夏の夜風にそよそよと優しい音を立てている。

〝あ、自転車〟と思い出したのは言わなかった。
今、私の心に満ちる想いは一つだけ。


「高梨さん」


「今度はなに」


「好きです」


「……」


彼は無言だったけれど、きっと返事はい最初の告白の時に言ってくれたこの言葉だ。


〝俺がどれだけ我慢してるか、分かるか?〟


だって、彼の歩く速度が少しだけ早くなったから。



その夜、私たちは数えきれないほどキスをして、言葉で身体で「好き」と伝え合った。
最後にキスをした記憶は、窓の外が白む頃だったかもしれない。





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