極甘同居~クールな御曹司に独占されました~
どんなにその御曹司が素晴らしいか聞かされても、私は今一つ有香みたいに盛り上がれない。


「何よ柚希、文句言いたげね」


歯切れの悪い私の反応に、有香が突っかかってくる。

私はイケメンという生き物に懐疑的だ。
しかも御曹司ともなれば、ちやほやされることが当たり前だと思っている、ろくでもない人間を連想してしまう。


「イケメンって大抵ナルシストだと思う。たぶん一日のうち三十分は鏡を見てるんじゃない? 外見のスペックで女を格付けする人多いし」


「もう、柚希ったら」


有香が呆れたように声を上げた。


「もしかしてまだ佐々木先輩のこと、引きずってるの?」


「まさか。大昔の話じゃない」


即座に否定し、何でもないことのように笑ってみせたけれど、有香の言葉は私の痛い所を突いていた。
私をイケメン嫌いにさせ臆病にした、何年も昔の古い傷だ。

とっくの昔に消し去ったその彼への恋心は、痛みの代わりにまるでシミのようにしつこい後遺症を私に残した。




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