【短編】親愛なる夜

幽霊

幽霊の仁美に、引っ張られ
て、僕は海から出た。

「恐くない?私のこと」

「大丈夫。でも…」

「でも?」

「仕方ないよ。仁美に怨ま
れるのは…」

「怨むって、私が?どうし
て?」

「それは、一年前の今日、
僕が仁美を、ココに誘わな
ければ死ななかっただろ」

「何だ、そんなことか。バ
カみたい」

「バカみたいって」

「私が死んだこと、自分の
責任だって思ってたの?」

「うん」

「あのね、人には、決めら
れた寿命があるの…。だか
ら、恒介の責任じゃないの
よ」

「でもな…」

「私の死は、避けられない
ことだったのよ。だから、
気にしないで」

「それでも、考えてしまう
よ」
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