しあわせ食堂の異世界ご飯
アリアとシャルルがハンバーグを持って店内へ行くと、全員が揃っていた。
エマとカミルは飲み物を用意してくれていて、ベロニカと息子のレオは席に着いて今か今かと食事を待ちわびている。
「お待たせしました! 今日は、チーズを使った『ハンバーグ』です」
全員で席に着くと、本日の主役であるレオがじいっとハンバーグのとある一点に釘付けになった。
それは、アリアが用意した動物の絵が描かれた旗だ。
日本のお子様ランチのように、レオのハンバーグにだけおまけとして中央に立ててある。
「うわぁ、すごい! それに、とっても可愛いよ!!」
ワンプレートに盛り付けされていて、中央にチーズの載ったハンバーグ。
後ろに添え物として、星型に切ったニンジンと、蒸かしたトウモロコシ。それからバターを載せたばかりのほくほくじゃがバターだ。
別カゴにはふわふわのパンを用意し、何個でも食べられるようにしている。
レオは胸を高鳴らせながら、フォークでハンバーグに切れ目を入れる。
すると、じゅわあと肉汁が溢れ、とろけたチーズがそこに絡まっていく。ふわっとした湯気には肉の旨味が含まれていて、思わずレオのお腹が鳴ってしまう。
「うわぁ、こんなに柔らかいお肉は初めて!」
どうなってるんだろう? そう言いながら、レオが大きな口を開けてぱくりとハンバーグを口に含む。
その瞬間、大きく目を見開きアリアやベロニカを見て、今度はぎゅうっと目を閉じてその美味しさを堪能する。
「ん、んん~っ!!」
柔らかな肉なのに、その旨味は爆発的だ。レオの舌の上で踊るようにして、もっと味わえとばかりに次の肉を急かす。
苦手なニンジンが刻んで入れられているなんて、きっと夢にも思わないだろう。
「はふ……っ、はぁ、美味しい……」
たった一口食べただけなのに、レオの顔は満足そうだ。そのまま星型のニンジンにフォークを指して、それもぺろりと食べてしまう。
それを見て、ベロニカが驚いて声をあげる。
「ニンジンの形を変えただけなのに、あっさり食べてしまうなんて……」
「よかったじゃないかい。まあ、切るのは少し手間だけど、大人になったら星型じゃなくても食べられるようになるさ」
「それもそうね」
エマが豪快に笑い、まだ手を付けていない全員を見回す。
「さあ、私たちもこの『ハンバーグ』とやらにありつこうじゃないか」
「そうしましょう! 私、もう待ちきれません……んんんっ、美味しい~!!」
エマの号令を聞き、まっさきにシャルルがハンバーグを口に含む。とろとろのチーズとソースが混ざり合っているのは、とても贅沢だ。
「うわ、このジャガイモも美味い……っ」
「アリアの料理は、みんなを幸せにしてくれるねぇ」
ハンバーグを堪能しながら、エマはアリアに「ありがとう」と礼を述べる。
「まさか、この食堂がもう一度こんな賑やかになるなんて……思ってもいなかったからね」
「エマさん……」
「アリアちゃんには、感謝してもしきれないよ」
エマから告げられた言葉に、アリアは胸の内がじんと熱くなるのを感じた。
ここ【しあわせ食堂】は、エマとカミル、そして亡くなった夫の思い出が溢れる大切な場所だ。
他人であるアリアがその厨房を使ってもいいだろうか? そんな不安を感じたこともあるけれど、それはまったく無用な心配だった。
豪快な店主であるエマは、アリアの料理を喜んでくれたのだ。
「私も、こうして料理することができて幸せです。雇ってくれているエマさんには、とても感謝しているんですよ」
「よく言うよ、それだけの腕を持ってるくせに」
アリアの言葉を聞き、エマはアッハッハと豪快に笑う。そしてレオを見ながら、エマは「そうだった」とアリアに問いかける。
「はい?」
「この『ハンバーグ』ってやつは、ベロニカが家で作ることもできるのかい?」
「もちろん、できますよ」
「本当? 嬉しいわ!」
すぐベロニカが手を叩き、ぜひレシピを教えてくれとアリアに頼み込む。
もちろん初めからそのつもりなので、アリアは簡単に作れるハンバーグのレシピをベロニカに教えていく。
難しい材料は使わず、普段から家にあるものだけで十分だ。
「……なるほどね、確かにこれくらいだったら私にも作ることができそう」
「ベロニカにできるなら、私もできそうだね! 店に出そうかね?」
「やだ、エマは料理下手なんだから大人しく給仕をしていた方がいいわよ」
「母さんは駄目だ。父さんがいたときは、厨房立ち入り禁止だったのを忘れたのか?」
ベロニカがレシピを覚えた横で、エマが冗談めいた口調で言うとベロニカとカミルに止められてしまう。
そしてすぐ、エマがアリアたちに内緒にしていたことをカミルにさらっと告げてしまった。
……そう、エマは料理が下手だったので厨房に入るなと言われていたのだ。
なので、エマの料理が美味いわけもなく……案の定、しあわせ食堂は潰れるという危機に面していた。
それを救った救世主が、言わずもがなアリアだ。
「こらカミル! 勝手に人の秘密をばらすんじゃないよ!!」
「秘密にしてたのかよ! てっきりネタかと思ってたわ」
唐突に始まったエマとカミルの掛け合いに、アリアたち全員が笑う。ベロニカに至っては、お腹を抱えて涙を流して爆笑だ。
「はーもう、エマとカミルのせいでお腹が痛いよ!」
「うるさいねえ、あんたは! 私だって、好きで立ち入り禁止だったわけじゃないんだよ!!」
「アハハハ!」
アリアとシャルルは賑やかな光景を見て、二人で小さく笑う。
そういえば、エストレーラにいたときもしばしばこんな風に楽しい食事会があったものだ。
きっとこの光景が、本来の【しあわせ食堂】だったのだろう。
エマとカミルは飲み物を用意してくれていて、ベロニカと息子のレオは席に着いて今か今かと食事を待ちわびている。
「お待たせしました! 今日は、チーズを使った『ハンバーグ』です」
全員で席に着くと、本日の主役であるレオがじいっとハンバーグのとある一点に釘付けになった。
それは、アリアが用意した動物の絵が描かれた旗だ。
日本のお子様ランチのように、レオのハンバーグにだけおまけとして中央に立ててある。
「うわぁ、すごい! それに、とっても可愛いよ!!」
ワンプレートに盛り付けされていて、中央にチーズの載ったハンバーグ。
後ろに添え物として、星型に切ったニンジンと、蒸かしたトウモロコシ。それからバターを載せたばかりのほくほくじゃがバターだ。
別カゴにはふわふわのパンを用意し、何個でも食べられるようにしている。
レオは胸を高鳴らせながら、フォークでハンバーグに切れ目を入れる。
すると、じゅわあと肉汁が溢れ、とろけたチーズがそこに絡まっていく。ふわっとした湯気には肉の旨味が含まれていて、思わずレオのお腹が鳴ってしまう。
「うわぁ、こんなに柔らかいお肉は初めて!」
どうなってるんだろう? そう言いながら、レオが大きな口を開けてぱくりとハンバーグを口に含む。
その瞬間、大きく目を見開きアリアやベロニカを見て、今度はぎゅうっと目を閉じてその美味しさを堪能する。
「ん、んん~っ!!」
柔らかな肉なのに、その旨味は爆発的だ。レオの舌の上で踊るようにして、もっと味わえとばかりに次の肉を急かす。
苦手なニンジンが刻んで入れられているなんて、きっと夢にも思わないだろう。
「はふ……っ、はぁ、美味しい……」
たった一口食べただけなのに、レオの顔は満足そうだ。そのまま星型のニンジンにフォークを指して、それもぺろりと食べてしまう。
それを見て、ベロニカが驚いて声をあげる。
「ニンジンの形を変えただけなのに、あっさり食べてしまうなんて……」
「よかったじゃないかい。まあ、切るのは少し手間だけど、大人になったら星型じゃなくても食べられるようになるさ」
「それもそうね」
エマが豪快に笑い、まだ手を付けていない全員を見回す。
「さあ、私たちもこの『ハンバーグ』とやらにありつこうじゃないか」
「そうしましょう! 私、もう待ちきれません……んんんっ、美味しい~!!」
エマの号令を聞き、まっさきにシャルルがハンバーグを口に含む。とろとろのチーズとソースが混ざり合っているのは、とても贅沢だ。
「うわ、このジャガイモも美味い……っ」
「アリアの料理は、みんなを幸せにしてくれるねぇ」
ハンバーグを堪能しながら、エマはアリアに「ありがとう」と礼を述べる。
「まさか、この食堂がもう一度こんな賑やかになるなんて……思ってもいなかったからね」
「エマさん……」
「アリアちゃんには、感謝してもしきれないよ」
エマから告げられた言葉に、アリアは胸の内がじんと熱くなるのを感じた。
ここ【しあわせ食堂】は、エマとカミル、そして亡くなった夫の思い出が溢れる大切な場所だ。
他人であるアリアがその厨房を使ってもいいだろうか? そんな不安を感じたこともあるけれど、それはまったく無用な心配だった。
豪快な店主であるエマは、アリアの料理を喜んでくれたのだ。
「私も、こうして料理することができて幸せです。雇ってくれているエマさんには、とても感謝しているんですよ」
「よく言うよ、それだけの腕を持ってるくせに」
アリアの言葉を聞き、エマはアッハッハと豪快に笑う。そしてレオを見ながら、エマは「そうだった」とアリアに問いかける。
「はい?」
「この『ハンバーグ』ってやつは、ベロニカが家で作ることもできるのかい?」
「もちろん、できますよ」
「本当? 嬉しいわ!」
すぐベロニカが手を叩き、ぜひレシピを教えてくれとアリアに頼み込む。
もちろん初めからそのつもりなので、アリアは簡単に作れるハンバーグのレシピをベロニカに教えていく。
難しい材料は使わず、普段から家にあるものだけで十分だ。
「……なるほどね、確かにこれくらいだったら私にも作ることができそう」
「ベロニカにできるなら、私もできそうだね! 店に出そうかね?」
「やだ、エマは料理下手なんだから大人しく給仕をしていた方がいいわよ」
「母さんは駄目だ。父さんがいたときは、厨房立ち入り禁止だったのを忘れたのか?」
ベロニカがレシピを覚えた横で、エマが冗談めいた口調で言うとベロニカとカミルに止められてしまう。
そしてすぐ、エマがアリアたちに内緒にしていたことをカミルにさらっと告げてしまった。
……そう、エマは料理が下手だったので厨房に入るなと言われていたのだ。
なので、エマの料理が美味いわけもなく……案の定、しあわせ食堂は潰れるという危機に面していた。
それを救った救世主が、言わずもがなアリアだ。
「こらカミル! 勝手に人の秘密をばらすんじゃないよ!!」
「秘密にしてたのかよ! てっきりネタかと思ってたわ」
唐突に始まったエマとカミルの掛け合いに、アリアたち全員が笑う。ベロニカに至っては、お腹を抱えて涙を流して爆笑だ。
「はーもう、エマとカミルのせいでお腹が痛いよ!」
「うるさいねえ、あんたは! 私だって、好きで立ち入り禁止だったわけじゃないんだよ!!」
「アハハハ!」
アリアとシャルルは賑やかな光景を見て、二人で小さく笑う。
そういえば、エストレーラにいたときもしばしばこんな風に楽しい食事会があったものだ。
きっとこの光景が、本来の【しあわせ食堂】だったのだろう。