結婚しても恋をする
差出人は“宮内 彰大《あきひろ》”
心臓がドクドクと早鐘を打ち始めた感触を得て、息を呑みマウスをクリックした。
決まりきった挨拶文の後に続いた言葉に、驚いて目を見張った。
『退職を思い留まってくれて、ありがとう。』
震えそうな右手で、画面をスクロールして行く。
『でも何か理由があったと思います。それはまた落ち着いたら教えて下さい。』
目頭が熱く、溢れてしまいそうな心を察知しても、止める術もなかった。
『先日の話の中で、退職の理由が幾つかあったと思います。
体調不良。
派遣社員よりも時給が低い。
社員が少なく、将来が不安。
今後は、ひとつひとつ解決して行かないといけないと思っています。』