結婚しても恋をする
揺さぶり
此処へ来て漸く、不倫の一番のリスクについて考え始めた。
勿論頭に無かったわけではなく、考えることから逃げていた。
“W不倫”で検索を掛けると、あな恐ろしい終焉が次々に表示され青ざめる。
慰謝料最大500万だの、四者面談の末離婚だの……。
画面上に繰り広げられる現実の修羅場が嫌過ぎて、思わず戻るボタンを押下してしまう程だ。
そして、男性は家庭へ帰って行き、女性は全てを失うということも──。
今日もすらりとした長身を遠目に認めると、こちらを振り返る。
課長がそんなに特定の相手を見つめてはまずいだろう、などと突っ込みを入れながらも何処か舞い上がっている心も知っていた。
きっと他の誰も気付かない、わたし達ふたりだけの秘密──
とは言え、わたしは実際に課長とどうこうなることを望んではいないはずで、第一そんな度胸もない。
郷ちゃんに対する後ろめたさも、いよいよ膨らんで来た。
心で裏切っていたとしても、愛しているのかわからなくても。
宮内課長だって妻子有る身で、何かを起こすつもりもないかも知れない。
今後何があったとしてもプラトニックを貫くことだと、よくわからない決意を固めた。