結婚しても恋をする

今年も残すところひと月を切った頃、仕事終わりに音楽の趣味が合う璃海と、好きなアーティストのライブに出向いた。
他にも映画、絵画、漫画と鑑賞系の趣味ばかりで、友人とも郷ちゃんとも会話の中心のひとつとなっている。
開演までの待ち時間はいつも、女子トークに花を咲かせる心地好いひと時だ。

「今日は旦那さん来れなかったの?」

問い掛けられて初めて、そういえば最近郷ちゃんとは音楽の話題も盛り上がっていないと気付いた。

「仕事で間に合わないって」
「平日だもんねー……てかあの話、その後どうなったの。旦那とちゃんと仲良くしてる?」

「……不倫の話?」

はぐらかすつもりもないが通り一遍の確認を取ると、神妙な面持ちで頷く。
やはり皆、気に掛けてくれてはいるようだ。

「……どうもなってないけど……何か、本人にバレたみたい」
「え」

目を丸くした璃海におどけたように苦笑いして見せた後、僅かに瞼を伏せ続ける。

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