結婚しても恋をする
ライトアップを満喫すると、近くのカジュアルフレンチへ連れられた。
気取らない素朴さのある小さなお店で、明る過ぎない照明もまた雰囲気が良かった。
頼んだドリンクは今回も店員に間違えられ、わたしの前へカクテル、郷ちゃんの前へビールが運ばれたが、それすらも楽しめそうな気分でグラスを入れ替え突き合わせた。
「メリークリスマース」
わたしよりも甘党な郷ちゃんの定番、カシスオレンジ。女子かっ! と突っ込みを入れたくなるが、もう慣れた。
美しく彩られた料理に舌鼓を打ちながら、他愛もない日々の仕事の報告が、久々に心地良かった。
「本当は主任でもなりたくなかった。営業は営業で嫌だったけど、あんまり他の人に会わなくて済んで、そういう面では楽だった……。今は、皆があれやってこれして言ってくるのが、きつい。外出する時は、いかにして遅く戻るかばっか考えてる」
「おい……そんなことしてるから、仕事が終わらないんでしょ……」