そしてあなたと風になる
「ところで」
「さっきの子猫はどうするおつもりですか?」
ひと足さきに通常業務に戻っていった晴斗を見送った後、
ソファから立ち上がった橘が、まひるに話しかけた。
「ちぃちゃんなら私が飼うことにしました。」
「一応、当社のホームページに、ちいちゃんの本当の飼い主はいないか、おたずねのポスターも一定期間掲示しようかと思ってますけど。」
まひるの言葉に、橘と櫻木は過剰な反応を示す。
「「ちぃちゃん?!」」
にやけた口元を隠しながら笑う橘と、なぜか耳まで真っ赤になって、鋭い眼をさらに鋭くさせている櫻木。
「ちっちゃいからちいちゃんですよー。今、事務の子に動物病院に連れていってもらってます。」
「それは、それは。」
「いい飼い主に恵まれそうで、よかったですね。ち・い・ちゃん」
橘は櫻木の方を向いて意地悪そうな笑みを浮かべる。
「はい、運命だと思って大切にします!」
『 !!! 』
橘は、満足したように頷きながらまひるを見た後、真っ赤なままで立ち尽くす櫻木の肩をポンポンと叩いた。
ー楽しい仕事になりそうだなー
3人はそれぞれの思いでそう心の中で呟いた。
まひるは手を振って社長室を出ていく王子達を見送った。
+++++++++
櫻木コーポレーションの公用車である、黒のハイブリッドカーに乗り込み、諏崎デザイン工房の地下駐車場を出ると、橘は声を出して笑い始めた。
「鉄の男"ちいちゃん"は、まひる社長の前だと表情豊かになるんだな。」
「うるさい」
櫻木と橘は、会社では上司と部下だが、普段はただの従兄弟同志である。
小さい頃のあだ名は、折しも
"『ちいちゃん』『みっちゃん』"
「男と思っていたら女だったり、のんびりしてるくせにカリスマデザイナーだったり,,,。」
『それに』
じっと見つめ返してくるあの瞳,,,。
色素の薄いブラウンの虹彩
『俺が凝視して目をそらさない奴はいなかったのに』
ナチュラルメイクに透き通るような白い肌
茶色で柔らかそうなストレートヘア
裏のない笑顔,,,。
何もかもが、櫻木の周囲にいる女性達とは違っていた。
諏崎デザイン工房のホームページを訪れたことで、"まひる"の造る世界(デザイン)は、百花だけでなく、櫻木の心もつかんでいた。
お目通りするまでは、謎めいたクリエイターへの純粋な興味しかなかった。
実際に会うと驚きの連続であった。
普段、感情を表に出すことのない櫻木も、自分の中に芽生えた不思議な感情に戸惑いを隠せないでいた。
「さっきの子猫はどうするおつもりですか?」
ひと足さきに通常業務に戻っていった晴斗を見送った後、
ソファから立ち上がった橘が、まひるに話しかけた。
「ちぃちゃんなら私が飼うことにしました。」
「一応、当社のホームページに、ちいちゃんの本当の飼い主はいないか、おたずねのポスターも一定期間掲示しようかと思ってますけど。」
まひるの言葉に、橘と櫻木は過剰な反応を示す。
「「ちぃちゃん?!」」
にやけた口元を隠しながら笑う橘と、なぜか耳まで真っ赤になって、鋭い眼をさらに鋭くさせている櫻木。
「ちっちゃいからちいちゃんですよー。今、事務の子に動物病院に連れていってもらってます。」
「それは、それは。」
「いい飼い主に恵まれそうで、よかったですね。ち・い・ちゃん」
橘は櫻木の方を向いて意地悪そうな笑みを浮かべる。
「はい、運命だと思って大切にします!」
『 !!! 』
橘は、満足したように頷きながらまひるを見た後、真っ赤なままで立ち尽くす櫻木の肩をポンポンと叩いた。
ー楽しい仕事になりそうだなー
3人はそれぞれの思いでそう心の中で呟いた。
まひるは手を振って社長室を出ていく王子達を見送った。
+++++++++
櫻木コーポレーションの公用車である、黒のハイブリッドカーに乗り込み、諏崎デザイン工房の地下駐車場を出ると、橘は声を出して笑い始めた。
「鉄の男"ちいちゃん"は、まひる社長の前だと表情豊かになるんだな。」
「うるさい」
櫻木と橘は、会社では上司と部下だが、普段はただの従兄弟同志である。
小さい頃のあだ名は、折しも
"『ちいちゃん』『みっちゃん』"
「男と思っていたら女だったり、のんびりしてるくせにカリスマデザイナーだったり,,,。」
『それに』
じっと見つめ返してくるあの瞳,,,。
色素の薄いブラウンの虹彩
『俺が凝視して目をそらさない奴はいなかったのに』
ナチュラルメイクに透き通るような白い肌
茶色で柔らかそうなストレートヘア
裏のない笑顔,,,。
何もかもが、櫻木の周囲にいる女性達とは違っていた。
諏崎デザイン工房のホームページを訪れたことで、"まひる"の造る世界(デザイン)は、百花だけでなく、櫻木の心もつかんでいた。
お目通りするまでは、謎めいたクリエイターへの純粋な興味しかなかった。
実際に会うと驚きの連続であった。
普段、感情を表に出すことのない櫻木も、自分の中に芽生えた不思議な感情に戸惑いを隠せないでいた。