恋をしようよ
汐留めのビル群にある、最上階の和風居酒屋レストラン、よくデートに使う常連の店の窓際の席を予約していた。
お洒落で雰囲気もあって食事もお酒も美味しいけれど、周りは仕事帰りのサラリーマンやOLが多いからか、意外と入りやすくて緊張もしないだろうと思っていた。
待ち合わせの五分前には店に入ってナツを待っていた。
そして、五分遅れでナツがやってきて、「遅くなってごめんなさい」なんて慌てている。
ちょっと迷ったらしい。
いつものような、ボーイフレンドデニムにTシャツ、今日は少し化粧をしているのかなって思った。
「大丈夫、そんなに待ってないから。何飲む?」
とりあえず2人でビールを頼むと、小奇麗なお通しが出てきて、それでまずカンパイした。
「今日は着物じゃないんですね、なんか新鮮だ。」
「俺だって、ちゃんとTPOに合わせるんだよ、こういう所じゃ。」
白シャツに細身のダークなスーツで、今日はちょっとだけ周りのリーマンのような格好で会いたいなって思ったんだ。
俺も普通の男だぜって思わせたかったのかもしれない。
「好きなの頼みなよ、俺なんでもいいから。」
そうやってメニューを彼女に渡すと、一生懸命悩んでいるから、何が好きって聞いてやる。
「豆腐とか野菜とかですかね、私あんまり食べられるものなくて・・・」
だから、あんまり食事とかに誘われても、行くことはほとんどないんだっていつものようにぼそぼそと呟いている。
肉も鶏肉ぐらいしか食べれなくて、魚介類も生はダメらしい。
「はじめに聞いとけばよかったな。」
じゃあこれはって、適当に食べれそうなやつを指してやると、それでいいですとうなづいている。
「・・・ああ、でもバーニャカウダーで二千円って・・・たっか・・・」
値段も気にしてくれてんだって思ったら、おごりだから気にしないで食べればいいのにって可笑しくなった。
「今日は気にせずしっかり食べろよ、なんかナツってよわっちそうだもんな。」
そうやって笑ってやると、ちょっと膨れて「大きなお世話ですよ」なんて言う。
「仕事忙しいの?」
おかわりのビールを頼む頃には、フードメニューもそろっていて、食べながら少しずつ彼女の話を聞いていた。
「そうですね・・・そろそろ締め切り近いし、原稿も書かなくちゃだし、土日もライブとか行かなきゃいけないから忙しいっちゃ忙しいですね。」
そんな中で、毎週オールでクラヴに来るのは、結構しんどいんじゃないかと思うけど、それでも来たいんだろうなってちょっと心が痛くなった。
「でも、好きなことを仕事に出来たんですから、ちょっとぐらい大変でも平気です。オールも慣れちゃったし。」
そういえば、この前お花を教えてくれって冗談交じりに話していたけれども、きっとあれは社交辞令だったんだろうなって思い返す。
そんな余裕なんてなさそうだな・・・
今日は、そのことも話そうかと思っていたのに。
「あの、この前言ってたことなんですけど、ほんとに教えてもらえるんですか?お花?」
ナツの方から、そう言い出すので、ちょっとびっくりしていた。
「え?ああ、いいけど、そんな忙しいんじゃないの?」
俺は決まったお稽古の日は週に2回くらいで、後はフリーランスみたいなもんだから、割と自由な時間は作れる。
いつがいいって聞くと、次の土曜日は空いているという。
「じゃあその日にしようか、俺んちまで来れる?田園調布だけど。」
地図アプリで場所を検索してあげて、行き方を教えてあげる。
駅からも近いし、タクシー乗っても池乃壕って言えばすぐわかる場所だ。
「あ、でもどんな格好していけばいいんですか?私いつもこんななんで・・・」
「着物はないよな。」
そうだ、普通の人は普段着ないもんなあ・・・姉ちゃんに頼むかね?
「一応着れますけど、実家に行かないとないです。」
「じゃあこっちで何とかするから、いつもの感じでいいよ。」
三杯目の酒は、ビール以外のものを頼むと、ナツはほろ酔いになってきたのか頬を赤く染めていた。
お洒落で雰囲気もあって食事もお酒も美味しいけれど、周りは仕事帰りのサラリーマンやOLが多いからか、意外と入りやすくて緊張もしないだろうと思っていた。
待ち合わせの五分前には店に入ってナツを待っていた。
そして、五分遅れでナツがやってきて、「遅くなってごめんなさい」なんて慌てている。
ちょっと迷ったらしい。
いつものような、ボーイフレンドデニムにTシャツ、今日は少し化粧をしているのかなって思った。
「大丈夫、そんなに待ってないから。何飲む?」
とりあえず2人でビールを頼むと、小奇麗なお通しが出てきて、それでまずカンパイした。
「今日は着物じゃないんですね、なんか新鮮だ。」
「俺だって、ちゃんとTPOに合わせるんだよ、こういう所じゃ。」
白シャツに細身のダークなスーツで、今日はちょっとだけ周りのリーマンのような格好で会いたいなって思ったんだ。
俺も普通の男だぜって思わせたかったのかもしれない。
「好きなの頼みなよ、俺なんでもいいから。」
そうやってメニューを彼女に渡すと、一生懸命悩んでいるから、何が好きって聞いてやる。
「豆腐とか野菜とかですかね、私あんまり食べられるものなくて・・・」
だから、あんまり食事とかに誘われても、行くことはほとんどないんだっていつものようにぼそぼそと呟いている。
肉も鶏肉ぐらいしか食べれなくて、魚介類も生はダメらしい。
「はじめに聞いとけばよかったな。」
じゃあこれはって、適当に食べれそうなやつを指してやると、それでいいですとうなづいている。
「・・・ああ、でもバーニャカウダーで二千円って・・・たっか・・・」
値段も気にしてくれてんだって思ったら、おごりだから気にしないで食べればいいのにって可笑しくなった。
「今日は気にせずしっかり食べろよ、なんかナツってよわっちそうだもんな。」
そうやって笑ってやると、ちょっと膨れて「大きなお世話ですよ」なんて言う。
「仕事忙しいの?」
おかわりのビールを頼む頃には、フードメニューもそろっていて、食べながら少しずつ彼女の話を聞いていた。
「そうですね・・・そろそろ締め切り近いし、原稿も書かなくちゃだし、土日もライブとか行かなきゃいけないから忙しいっちゃ忙しいですね。」
そんな中で、毎週オールでクラヴに来るのは、結構しんどいんじゃないかと思うけど、それでも来たいんだろうなってちょっと心が痛くなった。
「でも、好きなことを仕事に出来たんですから、ちょっとぐらい大変でも平気です。オールも慣れちゃったし。」
そういえば、この前お花を教えてくれって冗談交じりに話していたけれども、きっとあれは社交辞令だったんだろうなって思い返す。
そんな余裕なんてなさそうだな・・・
今日は、そのことも話そうかと思っていたのに。
「あの、この前言ってたことなんですけど、ほんとに教えてもらえるんですか?お花?」
ナツの方から、そう言い出すので、ちょっとびっくりしていた。
「え?ああ、いいけど、そんな忙しいんじゃないの?」
俺は決まったお稽古の日は週に2回くらいで、後はフリーランスみたいなもんだから、割と自由な時間は作れる。
いつがいいって聞くと、次の土曜日は空いているという。
「じゃあその日にしようか、俺んちまで来れる?田園調布だけど。」
地図アプリで場所を検索してあげて、行き方を教えてあげる。
駅からも近いし、タクシー乗っても池乃壕って言えばすぐわかる場所だ。
「あ、でもどんな格好していけばいいんですか?私いつもこんななんで・・・」
「着物はないよな。」
そうだ、普通の人は普段着ないもんなあ・・・姉ちゃんに頼むかね?
「一応着れますけど、実家に行かないとないです。」
「じゃあこっちで何とかするから、いつもの感じでいいよ。」
三杯目の酒は、ビール以外のものを頼むと、ナツはほろ酔いになってきたのか頬を赤く染めていた。