恋をしようよ
店を出てエレベーターに乗る。
高層ビルの最上階の店だったから、エレベーターの窓からも東京湾に架かるレインボーブリッジの夜景が見えた。

たまたま二人きりになって、ぼんやりと夜景を眺めるナツの肩を抱き寄せた。

そっと唇を重ねると、彼女はいきなりの事でビックリして固まっている。

「本気だからな。さっき言ったことも…」

彼女の潤んだ瞳を見つめながらそんな風に伝えると、急に我ながら恥ずかしくなって目を伏せた。


そのまま手をとってギュッと握りしめる、もう逃げないでくれと願いながら。



ナツは何も言ってくれはしなかった。

ただ、繋いだ手はしっかりと握られていて、これは少し期待していいのかなとぼんやりと思う。
ふたりで無言のまま、汐留から新橋駅まで歩いていた。


「ちゃんと来いよな・・・土曜日。」

JRの改札まで送ると、ナツは小さく会釈をしてにっこりと笑うと、手を振ってから背を向けた。
振り向きもせず真っ直ぐにホームに向かう階段を上っていく彼女の姿を、見えなくなるまで見送っていた俺は、今夜も何も出来なかったなと思い返す。


今までこんなことはなかったのにな・・・



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