恋をしようよ
ナツとはあれから、蓮と桃をうちに送るついでに、永福町の自宅マンションまで車で送って行った。
車の中では、蓮がずっとナツを和ませるように、好きな音楽ネタをずっと話していて笑いが途切れなかったのは助かったけど。
双子を送った後やっと二人きりに戻れたのに、また何を話せばいいのかわからなくなってしまう。
「また連絡しますね。」
そんな風にまたはぐらかされて帰って行く彼女の背中を見つめながら、ただやりたいだけだったのはナツの方だったんじゃないかと不安に思えてきてしまった。
”また連絡する”ということは、それまでは連絡してくるなという意味だよなと、ぼんやりと思いながら、何だかやたら切ない気持ちになっていた。
今までの事といい昨日の事といい、すっかりナツに振り回されっぱなしで、らしくないなって思う。
こんなにも相手の気持ちがわからないと思ったの初めてだし、知りたいと思ったのも初めてだ。
いつもなら何も考えずに、その時の気分で女の子に連絡を取り合うのに。
数日後のロックナイト、今夜もこりもせずここにきていた。
ナツからのメールは、相変わらずなくて、やっぱりここに来なきゃ会えないのかとあきらめつつもタクシーで麻布まで向かう。
早く行き過ぎて必死さがばれるのが恥ずかしくて、一番盛り上がる2時ぐらいに店に入ると、もうすでに久地さんが回していた。
カウンターの隅、いつものナツの定位置に目をやると、そこには誰も居なくて、なんだかそこだけががらんと主を待ちわびているような空間になっているように思えた。
「今日はきてないのか・・・」
思わず声に出してうなだれると、カウンターに行っていつものテキーラをもらう。
誰にも声もかけず、なんとなくナツの席に座って、じっと久地さんの居るDJブースを見つめた。
いつもこんな風景を見ていたんだな、ナツは。
この場所は、やたら音が良く聞こえる。低音も高音も歌の歌詞でさえ、ハッキリと聞きわけられる。
「カズ、どうした?」
常連のカツオさんに声をかけられて、やっとここで会話らしい会話を始めた。
「どうもしないですよ。奥さんは今日一緒じゃないんっすか?」
数年前に会社の部下と結婚したカツオさんは、よく夫婦でここに来たりしていた。
ずっとうちの姉ちゃん狙ってたのにな、やっと吹っ切れたんだなと思うと、結婚パーティーのときの二人がとてもうらやましく思えたもんだ。
「今日はうちで留守番してるよ。カズは最近どうなんだよ、あんまナンパしてないらしいじゃん。」
そういえば、この夏はナツ以外の女の子と遊んだりしてないなって思う。
真理亜とも今までの関係を解消したし、本当にこの前のあれば久しぶりだった気さえしちまう。
「今は真剣に付き合いたい子がいるんでね、もう若くないですし。」
カツオさんに、おかわりのバーボンを奢ってもらう。
大きめな氷をくゆらすと、ゆっくりと溶けていくそれが強い酒を和らげてゆくようで、この恋もこんな風にゆっくりと淡く消えてゆくのかもしれないと思った。
「まあ、結婚なんてほぼ勢いだからな。」
そういって笑いながら乾杯してくれると、あんまり深刻になるなよって、何も話してもいないのに見透かされているような気がした。
車の中では、蓮がずっとナツを和ませるように、好きな音楽ネタをずっと話していて笑いが途切れなかったのは助かったけど。
双子を送った後やっと二人きりに戻れたのに、また何を話せばいいのかわからなくなってしまう。
「また連絡しますね。」
そんな風にまたはぐらかされて帰って行く彼女の背中を見つめながら、ただやりたいだけだったのはナツの方だったんじゃないかと不安に思えてきてしまった。
”また連絡する”ということは、それまでは連絡してくるなという意味だよなと、ぼんやりと思いながら、何だかやたら切ない気持ちになっていた。
今までの事といい昨日の事といい、すっかりナツに振り回されっぱなしで、らしくないなって思う。
こんなにも相手の気持ちがわからないと思ったの初めてだし、知りたいと思ったのも初めてだ。
いつもなら何も考えずに、その時の気分で女の子に連絡を取り合うのに。
数日後のロックナイト、今夜もこりもせずここにきていた。
ナツからのメールは、相変わらずなくて、やっぱりここに来なきゃ会えないのかとあきらめつつもタクシーで麻布まで向かう。
早く行き過ぎて必死さがばれるのが恥ずかしくて、一番盛り上がる2時ぐらいに店に入ると、もうすでに久地さんが回していた。
カウンターの隅、いつものナツの定位置に目をやると、そこには誰も居なくて、なんだかそこだけががらんと主を待ちわびているような空間になっているように思えた。
「今日はきてないのか・・・」
思わず声に出してうなだれると、カウンターに行っていつものテキーラをもらう。
誰にも声もかけず、なんとなくナツの席に座って、じっと久地さんの居るDJブースを見つめた。
いつもこんな風景を見ていたんだな、ナツは。
この場所は、やたら音が良く聞こえる。低音も高音も歌の歌詞でさえ、ハッキリと聞きわけられる。
「カズ、どうした?」
常連のカツオさんに声をかけられて、やっとここで会話らしい会話を始めた。
「どうもしないですよ。奥さんは今日一緒じゃないんっすか?」
数年前に会社の部下と結婚したカツオさんは、よく夫婦でここに来たりしていた。
ずっとうちの姉ちゃん狙ってたのにな、やっと吹っ切れたんだなと思うと、結婚パーティーのときの二人がとてもうらやましく思えたもんだ。
「今日はうちで留守番してるよ。カズは最近どうなんだよ、あんまナンパしてないらしいじゃん。」
そういえば、この夏はナツ以外の女の子と遊んだりしてないなって思う。
真理亜とも今までの関係を解消したし、本当にこの前のあれば久しぶりだった気さえしちまう。
「今は真剣に付き合いたい子がいるんでね、もう若くないですし。」
カツオさんに、おかわりのバーボンを奢ってもらう。
大きめな氷をくゆらすと、ゆっくりと溶けていくそれが強い酒を和らげてゆくようで、この恋もこんな風にゆっくりと淡く消えてゆくのかもしれないと思った。
「まあ、結婚なんてほぼ勢いだからな。」
そういって笑いながら乾杯してくれると、あんまり深刻になるなよって、何も話してもいないのに見透かされているような気がした。