恋をしようよ
海の見えるこじゃれたカフェで、蓮はピザを、桃はケーキを食べながら、俺とナツはお茶をしていた。
子供らが無邪気に食べるのを見るのは、いつも和む。
それにしても、さっきやきそば食べたのに、蓮はまた食べんのかよ。桃だって別腹とはいえ甘いもんならかなり食べるんだよな・・・

「大丈夫ですか?」

冷房のきいた店の中で、冷たいアイスコーヒを飲んだせいか、さっきの赤ら顔もすぐにひいてくれて、さっきの話も何とかごまかせてしまってほっとした。

「もう大丈夫、これからまた実家に帰るの?」

「いえ、休みは明日までなんで、今夜はもう東京に帰ろうかなって思ってます。」

じゃあ送ってくよってことになって、俺たちとナツと四人で車で東京まで帰ることになった。



こいつらが居なかったら、普通にデートみたいだったなって、ちょっと嬉しく思いながら、江ノ電で例の寺まで戻った。
住職と再度挨拶すると、うちの姪っ子だってナツを改めて紹介される。

「先代の家元の葬儀のときも、こいつもきてたんですよ。まだ5歳ぐらいだったかなその時は。
なあ、なおちゃん。」

そんな風に彼女を呼ぶから、一瞬であの時の少女がフラッシュバックする・・・

「ナツもしかして兄さん居る?」
そう聞くと、居ますよって普通に答えてくれるから、ああやっぱりあの時の子だと思い出す。

「俺、お前と会ってたな、あの時。」

嬉しくなって彼女の頭をいつもの癖でぽんと撫でると、ナツはにっこり笑ってそうでしたっけ?なんて覚えてなかったらしいけれども・・・



< 29 / 50 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop