恋をしようよ
カーステレオから、ずっとランダムで俺の好きなロックが流れていた。
助手席に座るナツのことを気にしながら、高速を走らす。
運転は嫌いじゃない、時間を気にせず好きな所に行けるから。隣に好きな子が居るなら、なおさらだ。
この前よりもずっと長い時間の運転だからか、色々な話も出来るし。
蓮と桃は、後ろのシートで仲良く眠ってしまった。
結構走り回ったりして、はしゃいでたもんな。桃なんか特に、いつもそういう事がないから、普段と違って疲れたんだろう。
「2人ともかわいい顔して寝てますね。」
ナツが後ろを見ながら、そういって笑っている。
「あのさ、この前の返事まだ聞いちゃだめかな…」
やっと二人きりの時間が出来た気がして、思い切ってそう切り出すと、ナツは急に俯いて言いづらそうにしている。
「いや、いつでもいいんだ。ちゃんと考えてくれれば何でも。ただ俺は、何度も言うけど本気だからな。」
第三京浜に入ると、道は空いていて思いの他早く着いてしまうかも知れないと少しがっかりする。
隣を気にしながら返事をゆっくり待っていると、ナツの好きな例の曲が流れた。
「私…本当はもう会わないって思ってました。」
それだけやっと言ってくれるので、なんでだって疑問符が頭の中をぐるぐると回った。
「どうして?俺のことやっぱり嫌だったか?」
だとしたら、あの時何で誘ったんだって思うけど、あれが嫌だったのかとか、他に何か失敗したかとか思い返す。
「だって、カズヤさんを好きになると、きっと辛いから…」
その声が涙で潤んでいるように聞こえて、運転中にチラッと横を向くと、やっぱりナツは泣いているようだった。
「なんでだよ、俺何かしたかな?したんだとしたら謝るし、もうしないようにするから…」
だから泣くなよと、そっと彼女の右手を握り締めると、「危ないですから」とそっと手を解かれてしまった。
「カズヤさんは、何も悪くないんです。私が勝手に思ってただけで…」
そして言いずらそうに、俺の方をずっと見つめて呟いた。
「ずっと、初めてロックナイトで見かけたときから、好きだったんです。ごめんなさい…」
「どうして謝るんだよ…」
俺の気持ちは、いつもうまく伝わらなくて、空回りしては届かずにひとりでに堕ちてゆく。
”思った事をすぐ口に出すのをやめなよ”
そんな風に昔から友達にも言われていたのにな…
言葉にすれば軽くなる、それがどんな真実だろうとも、言葉より態度で伝えていかなければいけなかったのだろうか。
今まで伝えてきたことは、まったく信じてもらえてなかったということなのだろうか。
「私なんかダメなんです。わかってるのに、あなたにふさわしくないのに。
そうでしょう?きっとカズヤさんは、気まぐれでそう好きだとか言うけれども、いつもそうだったでしょう?
他にも好きな人はたくさん居て、みんなに愛されて、みんなと付き合って、私なんて私だけ見て欲しいって思ってしまうから、ダメなんです。」
ナツはどうして、こんなに卑屈なんだろうか、どうしてこんなに自分に自信がないのだろう。
あの時の少女は、満面の笑顔で、俺に泣くなと元気をくれたって言うのに。
「食事したり、お花を教えてもらったり、ほんとに嬉しくて勘違いしそうで、でも最後に抱いてもらえたら、もうそれだけで思い出に出来るからって、それで最後にしようと思ってたのに…」
夕暮れの多摩川を渡ると、もうそこは都内に入り、少しづつ渋滞になっていく。
やり場のない気持ちがそこに溜まりきったまま、宙ぶらりんの気持ちが出口をずっと探しているようで…
「どうして会いにきてくれたんですか…」
こんなに好きだと伝えてくれるのに、なんでナツは別れの言葉のように言うんだろう。
ただ俺は、俯いたナツの頭を優しくなでながら、もう泣くなと今度は言葉にせずに、そっと抱き寄せていた。
助手席に座るナツのことを気にしながら、高速を走らす。
運転は嫌いじゃない、時間を気にせず好きな所に行けるから。隣に好きな子が居るなら、なおさらだ。
この前よりもずっと長い時間の運転だからか、色々な話も出来るし。
蓮と桃は、後ろのシートで仲良く眠ってしまった。
結構走り回ったりして、はしゃいでたもんな。桃なんか特に、いつもそういう事がないから、普段と違って疲れたんだろう。
「2人ともかわいい顔して寝てますね。」
ナツが後ろを見ながら、そういって笑っている。
「あのさ、この前の返事まだ聞いちゃだめかな…」
やっと二人きりの時間が出来た気がして、思い切ってそう切り出すと、ナツは急に俯いて言いづらそうにしている。
「いや、いつでもいいんだ。ちゃんと考えてくれれば何でも。ただ俺は、何度も言うけど本気だからな。」
第三京浜に入ると、道は空いていて思いの他早く着いてしまうかも知れないと少しがっかりする。
隣を気にしながら返事をゆっくり待っていると、ナツの好きな例の曲が流れた。
「私…本当はもう会わないって思ってました。」
それだけやっと言ってくれるので、なんでだって疑問符が頭の中をぐるぐると回った。
「どうして?俺のことやっぱり嫌だったか?」
だとしたら、あの時何で誘ったんだって思うけど、あれが嫌だったのかとか、他に何か失敗したかとか思い返す。
「だって、カズヤさんを好きになると、きっと辛いから…」
その声が涙で潤んでいるように聞こえて、運転中にチラッと横を向くと、やっぱりナツは泣いているようだった。
「なんでだよ、俺何かしたかな?したんだとしたら謝るし、もうしないようにするから…」
だから泣くなよと、そっと彼女の右手を握り締めると、「危ないですから」とそっと手を解かれてしまった。
「カズヤさんは、何も悪くないんです。私が勝手に思ってただけで…」
そして言いずらそうに、俺の方をずっと見つめて呟いた。
「ずっと、初めてロックナイトで見かけたときから、好きだったんです。ごめんなさい…」
「どうして謝るんだよ…」
俺の気持ちは、いつもうまく伝わらなくて、空回りしては届かずにひとりでに堕ちてゆく。
”思った事をすぐ口に出すのをやめなよ”
そんな風に昔から友達にも言われていたのにな…
言葉にすれば軽くなる、それがどんな真実だろうとも、言葉より態度で伝えていかなければいけなかったのだろうか。
今まで伝えてきたことは、まったく信じてもらえてなかったということなのだろうか。
「私なんかダメなんです。わかってるのに、あなたにふさわしくないのに。
そうでしょう?きっとカズヤさんは、気まぐれでそう好きだとか言うけれども、いつもそうだったでしょう?
他にも好きな人はたくさん居て、みんなに愛されて、みんなと付き合って、私なんて私だけ見て欲しいって思ってしまうから、ダメなんです。」
ナツはどうして、こんなに卑屈なんだろうか、どうしてこんなに自分に自信がないのだろう。
あの時の少女は、満面の笑顔で、俺に泣くなと元気をくれたって言うのに。
「食事したり、お花を教えてもらったり、ほんとに嬉しくて勘違いしそうで、でも最後に抱いてもらえたら、もうそれだけで思い出に出来るからって、それで最後にしようと思ってたのに…」
夕暮れの多摩川を渡ると、もうそこは都内に入り、少しづつ渋滞になっていく。
やり場のない気持ちがそこに溜まりきったまま、宙ぶらりんの気持ちが出口をずっと探しているようで…
「どうして会いにきてくれたんですか…」
こんなに好きだと伝えてくれるのに、なんでナツは別れの言葉のように言うんだろう。
ただ俺は、俯いたナツの頭を優しくなでながら、もう泣くなと今度は言葉にせずに、そっと抱き寄せていた。