恋をしようよ
8
毎週のお稽古は土曜日、いつのまにかナツは、きちんと着物を着てくれるようになって、お稽古が終わるといそいそと帰っていく。
たまに食事に誘って、時間が合えば付き合ってくれるし、その後は彼女の部屋にいくことも多くなった。
あれからハッキリと、何も言ってはくれないけれど、これは付き合ってるってことでいいんだよな。
プロポーズの返事もまだもらってはいない。
高校生じゃあるまいし、告白したとかしないとか、言わないとダメみたいなのはないだろうとは思うけど、ちゃんと俺達はカップルになれているのかとたまに不安になる。
ナツがよく行くという下北沢の中華定食屋で、あるとき食事をすることになった。
仕事でよく会うバンドマン達もよく溜まるところらしく、アルバイトの店員もそっち系が多いらしい。
二階の座敷に通されると、いらっしゃいと元気な声の男子が迎えてくれて、一番隅の席に座った。
「ここなんでも美味しいんですよ。」
ニコニコしながらナツはタンメンと野菜炒めなんかを選んで、瓶ビールとグラス二つも注文した。
つまみに頼んだラッパ菜を食べながら、ビールで乾杯すると、姉ちゃんちに居るような感覚になる。やっぱ座敷っていいな。
「ここよくくるんだ?」
「そうですね、仕事でも使うし、ライヴの打ち上げとか、一人でラーメン食べに来たりとかもありますよ。」
注文の品が揃うと、さっきの店員がナツに声をかけてきて、親しそうに話してる。
「なっちゃん久しぶりやね。なに、彼氏できた?」
関西の訛りのあるその男は、俺の方も見て屈託のない笑顔を見せる。
「まあそんな感じですかね?」
やけに照れながら言うので、「彼氏です、どうも!」と俺の方からそいつに返事をしてやった。
「そうかぁよかったなぁ、なっちゃん!」
なんの裏もないような笑顔で、ナツの頭をポンポンと叩くと、そいつはさっさと仕事に戻っていった。
「なに?知り合いかなにか?」
やけに馴れ馴れしいそいつの後ろ姿を見ながら、なにかモヤモヤする感情がわいていた。
ナツの事をなっちゃんと呼ぶやつは、相当心を許してるやつに違いないと思ったし、ナツの態度もなんだか挙動不審なところがある。
まさか元カレとかじゃないよな…
「仕事でよくライヴいってたバンドの人です。よく会うんですよねどこにでもくるし…」
俺と目も合わせようともせずに、頼んだタンメンを食べながらナツはそんな風にいったけど、絶対ただの知り合いじゃないよなと思う。
チューか人の彼女に勝手に触んなと、そんな風にも思ったし。
「なんで触らせてんだよ、それになんかやけに馴れ馴れしいじゃん。」
ビールをあっという間に一瓶空けてもう一本頼むと、また奴がすぐに持ってきてくれる。
ありがとうと一応作り笑いをしながら受け取るも、内心イライラしていた。
「あの人は誰にでもそうなんですよ、人懐っこいっていうか…」
「俺がした時は嫌がったのに?」
わざと意地悪っぽくそう聞いてやると、あれはその…なんて言葉を濁す。
「言ったでしょ、好きな人にされるとビックリするんですよ。」
ナツがそんな風に真っ赤になりながら言い訳するのが、なんだか可愛くて、ちょっといじめたくなる。
たまに食事に誘って、時間が合えば付き合ってくれるし、その後は彼女の部屋にいくことも多くなった。
あれからハッキリと、何も言ってはくれないけれど、これは付き合ってるってことでいいんだよな。
プロポーズの返事もまだもらってはいない。
高校生じゃあるまいし、告白したとかしないとか、言わないとダメみたいなのはないだろうとは思うけど、ちゃんと俺達はカップルになれているのかとたまに不安になる。
ナツがよく行くという下北沢の中華定食屋で、あるとき食事をすることになった。
仕事でよく会うバンドマン達もよく溜まるところらしく、アルバイトの店員もそっち系が多いらしい。
二階の座敷に通されると、いらっしゃいと元気な声の男子が迎えてくれて、一番隅の席に座った。
「ここなんでも美味しいんですよ。」
ニコニコしながらナツはタンメンと野菜炒めなんかを選んで、瓶ビールとグラス二つも注文した。
つまみに頼んだラッパ菜を食べながら、ビールで乾杯すると、姉ちゃんちに居るような感覚になる。やっぱ座敷っていいな。
「ここよくくるんだ?」
「そうですね、仕事でも使うし、ライヴの打ち上げとか、一人でラーメン食べに来たりとかもありますよ。」
注文の品が揃うと、さっきの店員がナツに声をかけてきて、親しそうに話してる。
「なっちゃん久しぶりやね。なに、彼氏できた?」
関西の訛りのあるその男は、俺の方も見て屈託のない笑顔を見せる。
「まあそんな感じですかね?」
やけに照れながら言うので、「彼氏です、どうも!」と俺の方からそいつに返事をしてやった。
「そうかぁよかったなぁ、なっちゃん!」
なんの裏もないような笑顔で、ナツの頭をポンポンと叩くと、そいつはさっさと仕事に戻っていった。
「なに?知り合いかなにか?」
やけに馴れ馴れしいそいつの後ろ姿を見ながら、なにかモヤモヤする感情がわいていた。
ナツの事をなっちゃんと呼ぶやつは、相当心を許してるやつに違いないと思ったし、ナツの態度もなんだか挙動不審なところがある。
まさか元カレとかじゃないよな…
「仕事でよくライヴいってたバンドの人です。よく会うんですよねどこにでもくるし…」
俺と目も合わせようともせずに、頼んだタンメンを食べながらナツはそんな風にいったけど、絶対ただの知り合いじゃないよなと思う。
チューか人の彼女に勝手に触んなと、そんな風にも思ったし。
「なんで触らせてんだよ、それになんかやけに馴れ馴れしいじゃん。」
ビールをあっという間に一瓶空けてもう一本頼むと、また奴がすぐに持ってきてくれる。
ありがとうと一応作り笑いをしながら受け取るも、内心イライラしていた。
「あの人は誰にでもそうなんですよ、人懐っこいっていうか…」
「俺がした時は嫌がったのに?」
わざと意地悪っぽくそう聞いてやると、あれはその…なんて言葉を濁す。
「言ったでしょ、好きな人にされるとビックリするんですよ。」
ナツがそんな風に真っ赤になりながら言い訳するのが、なんだか可愛くて、ちょっといじめたくなる。