恋をしようよ
「夏川さん、急なお願いで申し訳ないのだが、こんな不肖な息子ですが、うちに嫁にきてはくれないだろうか?」

親父のやることなす事が、あまりにも急なことばかりで俺もナツも混乱する。

「そういうことは、俺が決めることだろう。もうとっくにそういうことは伝えてあるから!」

思わず頭にきてまた声を荒げてしまったけれど、ナツは酷くびっくりしていた。

「ええ?あの、私そんな事聞いてませんけど…」

「初めてのとき言ったろ、結婚を前提に付き合ってくれって。」




ちょっとまて、俺が何年も返事を待っていたのは、なんだったんだ…
あれからずっと、あえて何も聞かずに過ごしてきたのに。

「だってあの時は、本気じゃないと思っていたし、まだあまりお互いよく知らなかったから。」

子供の時のあの出会いも忘れられていたし、俺の必死のプロポーズも聞き流されていたなんで、よっぽど俺に信用がなかったのかと、自分に突っ込みを入れたくなっていた。

「もう充分わかっただろ?俺の気持ちは変らないよ。」

俺と家元に迫られて、ナツは恐縮しつつも、一歩後ずさりしてまた頭を下げた。









「あの…不束者ではありますが、よろしくお願いいたします。」



ナツの生けたリンドウの花のように、顔をあげた後彼女は微笑むと、俺は数年越しのプロポーズの返事に、心の中でガッツポーズを作っていた。






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