恋をしようよ
その日の夜は、親父のごり押しで、夕食にナツも招かれてしまった。
毎週ここに通ってきてくれていたのに、俺の部屋と稽古部屋の行き来だけだったから、ダイニングに通されたナツはいつになく緊張した面持だった.
テーブルの上には、いつものように母さんが活けたアレンジメントが置いてあり、母屋の和の世界と、大木を切り抜いて作られたダイニングテーブルとそれが、洋の世界とうまく調和している。
「やっと会いに行ったのね。」
母さんは、ナツのことを以前から知っていたらしく、久しぶりなんて声をかけている。
「和実先生ご無沙汰しております。」
ナツは丁寧に頭を下げると「そんなに畏まらなくていいのよ~ 息子の彼女が遊びに来ただけでしょう?」
そんな風に笑って答えている。
久しぶりに、母さんの得意料理の、和風ロースとビーフが振舞われて、四人で和やかに食事を取った。
「元ちゃんはね、五年前からずっとあなたのことを気にかけていたのよね。」
ニコニコしながら、母さんがそう言う。
「なんていうかな、お前に初めて会ったときのことを思い出したよ。」
まるで普通の家族の会話のように話すから、親父も釣られてテレながらぶっちゃけてくれている。
「初めて会った時かあ…そう言えば私のアレンジメントに、花が死にそうで可愛そうだって言ったのよね、元ちゃん。なんか悔しくて、あなたの花は自由がなくて窮屈そうだって返したんだったわ。
まだ華道が何なのかわかってなかったからね、私も。」
俺にとっては昔から聞いていた話だったから、またかと思いながら聞き流していたけれど、ナツは真剣にその話を聞いて相槌を打ってくれている。
そういえば、ナツは肉食べられなかったよなって思いながら彼女の皿を見ると、まだ手付かずのままだったのでそっとさげてあげる。
「あ、カズヤさん、それ少しだけもらっていいですか?」
いつもは絶対食べない牛肉を、せっかくだからとひとくちだけ食べるというので、小さく切り分けてまたよそってあげると、大事そうにゆっくりとかみ締めながら「美味しいですね。」と微笑んでいた。
「大丈夫、無理して食べなくてもいいぞ。」
心配で小声でそう聞くと、大丈夫ですよって笑ってくれるから、少し安心する。
「和風だから、ちょっと赤身の魚っぽい感じですし、、いいお肉なのでほんとにおいしいですよ。」
そんなやり取りを見て、母さんがお肉苦手だったの?なんていまさら聞いてくるから、はじめに言っとけばよかったなとも思うけど、まあ急にこうなったわけなのでしょうがないかな。
「あの、ホント私なんかでいいんでしょうか?」
恐縮しながらそんな風に俯くナツに、
「あなたでなきゃ駄目なのよ。」
と、母が優しく笑いかけてくれるから、俺も親父も大きくうなずいて、これからもよろしくなといつものように彼女の頭を撫でていた。
毎週ここに通ってきてくれていたのに、俺の部屋と稽古部屋の行き来だけだったから、ダイニングに通されたナツはいつになく緊張した面持だった.
テーブルの上には、いつものように母さんが活けたアレンジメントが置いてあり、母屋の和の世界と、大木を切り抜いて作られたダイニングテーブルとそれが、洋の世界とうまく調和している。
「やっと会いに行ったのね。」
母さんは、ナツのことを以前から知っていたらしく、久しぶりなんて声をかけている。
「和実先生ご無沙汰しております。」
ナツは丁寧に頭を下げると「そんなに畏まらなくていいのよ~ 息子の彼女が遊びに来ただけでしょう?」
そんな風に笑って答えている。
久しぶりに、母さんの得意料理の、和風ロースとビーフが振舞われて、四人で和やかに食事を取った。
「元ちゃんはね、五年前からずっとあなたのことを気にかけていたのよね。」
ニコニコしながら、母さんがそう言う。
「なんていうかな、お前に初めて会ったときのことを思い出したよ。」
まるで普通の家族の会話のように話すから、親父も釣られてテレながらぶっちゃけてくれている。
「初めて会った時かあ…そう言えば私のアレンジメントに、花が死にそうで可愛そうだって言ったのよね、元ちゃん。なんか悔しくて、あなたの花は自由がなくて窮屈そうだって返したんだったわ。
まだ華道が何なのかわかってなかったからね、私も。」
俺にとっては昔から聞いていた話だったから、またかと思いながら聞き流していたけれど、ナツは真剣にその話を聞いて相槌を打ってくれている。
そういえば、ナツは肉食べられなかったよなって思いながら彼女の皿を見ると、まだ手付かずのままだったのでそっとさげてあげる。
「あ、カズヤさん、それ少しだけもらっていいですか?」
いつもは絶対食べない牛肉を、せっかくだからとひとくちだけ食べるというので、小さく切り分けてまたよそってあげると、大事そうにゆっくりとかみ締めながら「美味しいですね。」と微笑んでいた。
「大丈夫、無理して食べなくてもいいぞ。」
心配で小声でそう聞くと、大丈夫ですよって笑ってくれるから、少し安心する。
「和風だから、ちょっと赤身の魚っぽい感じですし、、いいお肉なのでほんとにおいしいですよ。」
そんなやり取りを見て、母さんがお肉苦手だったの?なんていまさら聞いてくるから、はじめに言っとけばよかったなとも思うけど、まあ急にこうなったわけなのでしょうがないかな。
「あの、ホント私なんかでいいんでしょうか?」
恐縮しながらそんな風に俯くナツに、
「あなたでなきゃ駄目なのよ。」
と、母が優しく笑いかけてくれるから、俺も親父も大きくうなずいて、これからもよろしくなといつものように彼女の頭を撫でていた。