恋をしようよ
めまぐるしいほどのフェスの取材も終わり、やっとお盆休みが取れて数日実家に帰った。
実家のある鎌倉は、夏真っ盛りでリア充達がわちゃわちゃと由比ガ浜に押し寄せている。
海水浴場を避けて、海岸線をただただ歩く。
生まれてからずっと見続けてきたこの海を、ただの一度も恋人と歩いたことはなかった。
ひと気のない穴場のいつもの場所、写真を取ってSNSにあげてみるのは、どこかの知らない誰かとこの気持ちを共有したいからだ。
毎日寝て起きて食事を取って、そして海を見に行く数日間、ずっと思い出していた、カズヤさんと過ごした夢のような日々を。
ぼんやりと海を見つめながら、白昼夢をみていた。
”泣き虫なお兄ちゃん”
そんなワードが頭のどこかに思い出される。私の初恋の人。
顔も名前も覚えていなくて、ただ幼い頃に好きだったということを親から聞かされていただけだ。
シンデレラは夜遊びの後、王子にガラスの靴を残していった。
私は何も残してはいない。追いかけてくれることもないとあきらめているから。
そういえばあれから、何も連絡も取っていないな。
きっとこのままフェイドアウトしてゆくんだ…
もうすぐ日が暮れる、今夜にはもう東京に戻ろうと思う。
駅のホームで待っていると、藤沢行きの江ノ電がやってきた。
電車に乗り込む寸前、どこかで名前を呼ばれて振り返ると、そこにはまた夢のような彼が立っていたんだ。
「やっとみつけた…」
彼は私の手をとって、指先にキスを落とした。
王子は、ガラスの靴がなくとも、私を探してきてくれたんだと初めて気付く。
ぼんやりと暗く濁った未来がそこから一気に光がさしてゆく様な気がした。
実家のある鎌倉は、夏真っ盛りでリア充達がわちゃわちゃと由比ガ浜に押し寄せている。
海水浴場を避けて、海岸線をただただ歩く。
生まれてからずっと見続けてきたこの海を、ただの一度も恋人と歩いたことはなかった。
ひと気のない穴場のいつもの場所、写真を取ってSNSにあげてみるのは、どこかの知らない誰かとこの気持ちを共有したいからだ。
毎日寝て起きて食事を取って、そして海を見に行く数日間、ずっと思い出していた、カズヤさんと過ごした夢のような日々を。
ぼんやりと海を見つめながら、白昼夢をみていた。
”泣き虫なお兄ちゃん”
そんなワードが頭のどこかに思い出される。私の初恋の人。
顔も名前も覚えていなくて、ただ幼い頃に好きだったということを親から聞かされていただけだ。
シンデレラは夜遊びの後、王子にガラスの靴を残していった。
私は何も残してはいない。追いかけてくれることもないとあきらめているから。
そういえばあれから、何も連絡も取っていないな。
きっとこのままフェイドアウトしてゆくんだ…
もうすぐ日が暮れる、今夜にはもう東京に戻ろうと思う。
駅のホームで待っていると、藤沢行きの江ノ電がやってきた。
電車に乗り込む寸前、どこかで名前を呼ばれて振り返ると、そこにはまた夢のような彼が立っていたんだ。
「やっとみつけた…」
彼は私の手をとって、指先にキスを落とした。
王子は、ガラスの靴がなくとも、私を探してきてくれたんだと初めて気付く。
ぼんやりと暗く濁った未来がそこから一気に光がさしてゆく様な気がした。