ａｇａｉｎｓｔ
「――そういや、一緒にいた奴ら知ってんの？」

「ううん、知らない」

奈津美の交友関係を私は知らない。今の今まで興味がなかったんだもん。

つくづく冷たい人間だ。

私に気を使ってくれているんだろうか。私が黙りそうになると空かさず俊也が喋り出す。

「なら安心だな、今にもぶち噛ましそうな勢いで学校から飛び出してったから」

ハハハと半分無理した笑いが辺りを舞う。

「え、見てたわけ？」

「面白かったから追っかけてみた」

「あほじゃん」

俊也が本気で笑いだしたから、私の口からも笑いが零れる。

豪快に笑う俊也を見ると、やっと本当に開放されたんだという気分なった。

私の求めているものはきっと、押さえ付けるような正論でも、矛盾をなくす議論でも、変わらない結論でもない。

わかるわかると言われるよりも、『俺はこう思う』と言われた事が、私と同じということに喜びを感じる。

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