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「べっぴんだし?」

目だけこちらを向いて口元が笑っている、しれっと言われ、何だかモヤモヤした。

これが恋人同士なら、ムキー!バキー!てなもんで、ヤキモチやら何やら妬いたりするのかな。

変な気分。

「綾菜、彼氏いるし」

「知ってるし」

私のあらゆる攻撃をかわし、ケラケラ笑い出した俊也。

何がそんなに楽しいんだか。

笑う俊也を放っておいて、空を見上げると、真っ黒な雲から一粒、ぽつっと私のおでこに雨があたった。

思わず下を向くと、頭にまた一粒。

頭皮に浸透したそれは、おでこを伝い、眉間を通ったあげく、膨らみをさけるかのようにほっぺたを流れていく。

一粒落ちると次から次へと叩くように強く、バチバチ音をたてながら、あっという間に辺りを濡らした。

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