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「――それじゃあ……家族待たせてるから」

そう言って綾菜は背を向けた。

一瞬立ち止まり、振り替えって私に「バイバイ」と手を振った。

私が「バイバイ」と言い終わるくらいにまたあちらを向いて、もう振り返えることなく長い坂道に吸い込まれるように消えていった。

「バイバイ」がいつもの「バイバイ」で。

「また明日」そう言いたくなるような笑顔で。

それなのにもう会うことはないんだろうな、ってどこかで感じていて。

会おうと思えばいつでも会えるし、会いたくないわけでもないのに何でだろう。

やっぱり会うことはないと思った。

それなのに私ときたら、顔がにやけるほど嬉しくて。

悲しいはずなのに笑えてしまって。

自分でも変な奴だって思った。

友達になろうと言って始まったわけではないのだから、友達をやめようと言って終わるわけでもないんだ。

ただ、それだけなのに嬉しかったんだ。












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